「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」リノベる山下社長が語るLivingTechの可能性

山下智弘(やました・ともひろ)
1974年奈良県生まれ。近畿大学を卒業後、社会人ラグビーを経てゼネコンに入社。古い建物を壊して新築を建てるという日本の住まいのあり方に疑問を抱き、中古住宅の価値が見直されるべきだと考えるようになる。その後、株式会社esの立ち上げを経て、2010年にリノベる株式会社を設立。「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」というミッションのもと、国内No.1のワンストップ・リノベーション企業を築き上げる。最近ではスマートホームなど、Living Tech領域の活性化にも取り組んでいる。

–今まで、日本で中古住宅よりも新築ばかり選ばれてきたのはなぜですか。

その解を答える前に、全体像をお話ししますね。実は、日本以外の先進国では10人中8人が中古住宅を購入しますが、日本はその逆で2人しか中古住宅を購入しません。新築を買いたくても買えない人がしょうがなく中古住宅を買う、というようなネガティブなイメージが中古住宅にはありました。

戦後、国全体で新築の建設に投資し続ける仕組みが出来上がりました。政府は国民が家を持ちやすい政策を行い、住宅ローンは金利がとても低い。アメリカでは新築を購入すると税金がかかるのに対して、日本では新築購入で税金が安くなります。このようにして、新築偏重型の日本の住宅市場が出来上がりました。一度このような仕組みが出来上がってしまうと、変わるのは難しいですよね。

戦後、新築をたくさん建てなければいけなかった背景には2つの大きな要因があります。一つ目は、戦争で日本全体が焼け野原になったことです。戦争によってなくなった家を建て直す必要があったんですね。二つ目は、戦後、経済を立て直すためにGDPを上げる施策としても、新築建設には効果がありました。中古住宅を再利用するよりも家を新しく作るほうが、経済的効果が大きいですよね。このようにして出来上がった仕組みが、現代まで変わらず続いてきたということです。

しかし今、その状態に逆転が起きようとしています。インターネットによって情報の非対称性が無くなり、人々が「本当にこのままでいいのか」と疑問を持ち始めました。首都圏のマンション成約戸数では、この4年間で中古の割合が新築を逆転しました。情報が行きわたり、人々が中古住宅の価値に気づき始め、新築偏重が崩れてきています。

–人々は、中古住宅のどういう点に魅力を感じているのでしょうか。

新築と比べて中古は価値が落ちにくいという「かしこさ」と、多様化する個人のライフスタイルに合わせて内装を自由に変えられる「素敵さ」の2点だと思います。

例えば、ちょっと奮発して買った自転車を持っていたら、自分の家の玄関とかに置きたいですよね。でも、新築だと家の玄関に十分なスペースがなかったりします。しかし中古住宅をリノベーションすれば、自転車を中心とする家のデザインにすることができます。リビングに掛けることもできるし、玄関を大きくすることもできます。それが「素敵に」の部分です。「かしこく素敵に」暮らしたい人が増えてきているんです。

–なるほど。御社のワンストップ・リノベーションサービスの一環として、スマートホームについても取り組まれていますよね。今後、テクノロジーによって住空間はどのように「素敵に」なるとお考えですか。

テクノロジーを使って、自分に合った住空間をカスタマイズできるようになると思います。

例えば、スマホのホーム画面のデザインって人それぞれですよね。住空間も同じように、住む方のニーズにもっと寄り添うことができると考えています。スマートスピーカーをはじめとしたデバイスを家の中に追加してスマートホーム化できれば、気分によってライトの色を変えられたり、一言で様々な家電を同時に操作する、なんてこともできます。さらに、ネットワークに接続された機器がアップデートすることで進化し続けられる。その日の気分に合わせて住空間を変えられるようにもなると思います。そうなると、自分の住まいをもっと気に入るようになるんじゃないかな。

今までは住んでいる箱に合わせて自分を変えていましたが、スマートホームには、自分に合わせて箱を変えることができる可能性があると思います。

–ソフトウェア上で、自分に合わせて様々な要素を組み合わせていくということですか。

はい。例えば照明ひとつでも今までは20㎡の部屋だと照源は5個で、これぐらいの明るさにしないといけない、などの目安があり、一律そのとおりにつくられていました。

そのようにあらかじめ決められていると、ユーザーが自分の意思でできることはほとんどないですよね。電球を替えるとか色を変える、くらいしかできない。

しかし最近では、ボタン一つで簡単に明るさも色も変えられるようになってきました。時間帯によって明るさを変えることもできます。

–その時の気分によって自由に住空間を変えられるという事ですね。

そうですね。子供との時間はこうしようとか、寝るときはこうしよう、朝はこうしようと、箱が自分に合わせるようになるんです。それがスマートホームの世界観です。

–高齢化や人口減少が進む中で、日本の土地は今後どうなっていくと思いますか。

日本の人口が減少するのは確実な未来です。そうすると、家が余ります。これは個人的な意見なんですけど、僕は一人二つ家を持つ、なんて未来もあるのではと思っています。週末だけ違うところに住むのもいいと思います。

そうすると、移動コストや維持コストの問題が出てくると思いますが、そこをテクノロジーの力で解決できると思います。MaaSとかシェアリングエコノミーとか。

家のことになると「買うvs借りる」という話題がメディアでよく取り上げられますが、僕は必ずしも対立関係にする必要はないと思います。例えばメルカリで定価5万円のジャケットを3万円で買ったとして、1週間後にやっぱり飽きて2万4千円で売ったとしたら、6000円で借りたのと変わらないことになります。

そんなふうに、服や書籍などの世界で起こっていることが、これからは住いの世界でも起こるのではないかと考えています。空き家問題だってそういう解決方法もあるかもしれません。

–メルカリによる2次流通のように、住宅も2次流通が盛んになる、ということですか。

そうですね。ただ、どれだけ2次流通が盛んになっても、本当にそのブランドが好きな人は新品で買うと思うんですよ。

最初メルカリが出てきたときはブランドメーカーたちがとても反対しました。定価で買う人が少なくなるんじゃないかって。でも実際にはその逆のことが今起こっています。5万円で新品を買う人も「もしかするとあとあと2万円で売れるかも」と思い、購買のハードルが下がりました。住宅も同じことで、「新築vs中古」ではなくて、新築で買った人が2次流通を考えられるようにリノベーションを想起してもらえるよう、文化として育てていきたいですね。

–確かにそうですね。ところで、「世界中の面白いことをしたい」とよくおっしゃっていますが、個人的に今やりたいことは何ですか。

今は、車を作りたいですね(笑) 車の良さってもっとあるんじゃないか、と考えています。

ゼロから開発するのではなくて、昔の古い車をEV化したいです。車のリノベーションですね(笑)

以前、ランドクルーザー60という昔のかっこいい車に乗っていたんですけど、バッテリーは上がるし、スピードも出ないし大変でした。こういう感じで、「おしゃれのためには我慢しなければいけない」みたいな価値観ってありますよね。

でも、テクノロジーを使って古いものをもっと快適にできはずだと考えています。なので、EVの研究を行っている方々と一緒に、個人的にその構想を練っています。 

–とても面白いですね!ただ、エンジン音が好きな人達にはあまり好まれないかもしれないですね。

例えばポルシェやマセラティはEV車を作っていますが、エンジンの音や匂いまで再現しているんですよ。そういうふうに、エンジン音を再現しながら環境にも優しいモビリティを作ることは可能だと思います。

僕はオープンカーが好きなんですけど、日本ってオープンカーが少ないじゃないですか。冬にオープンカーに乗っていると、「我慢しているんじゃないの」と思われることがよくあります。でも、実はオープンカーって冬が一番快適なんですよ。屋根を閉めていれば全く風が入ってこないので暖かいし。あ、でも逆に夏は熱くて最悪です。あまり知られていないですよね。

「車には屋根が必要」とか「おしゃれのためには我慢しなければいけない」とか、「それほんとなの?」っていう事を色々と試してみたいという気持ちがあります。みんなが常識だと思っていることを疑って、体験してみたいんですよ。

もちろん、疑ってやってみたら、常識が正しかったっていうこともいっぱいあるし、昔の人は偉かったんだって気づくこともいっぱいあるけれど。とにかくやってみたいんですよね。

–プライベートではどのような生活をされているのですか。

17年間会社経営をやっていますが、もう仕事とプライベートの切り分けはできないですよね。子供と遊んでいる時間も、ジムに行っているときも、仕事のことは頭から離れません。でも、唯一ラグビーをしている時だけ、しんどすぎて仕事のことを考える余裕がありません(笑) 仕事を忘れるくらい必死にプレーをしています。

僕がやっているのはタッチラグビーです。タックルがない代わりに、相手にタッチされるとボールを置くというものです。40歳以上の日本代表に入っていて、去年のワールドカップでは世界第3位になりました。ワールドカップは4年に1回あります。選手の選抜が始まると、精神的にも体力的にも地獄の毎日です(笑)

–そんなに本気なんですね!

そうですね。最初は趣味でやっていたんですけど、気がつけば本気になっていました(笑)

いろいろな場面で僕自身が、「世界中の面白いことをしたい」とよく言っていますが、僕にとっての面白いって、本気でやれるかどうかなんですよ。

ラグビーも、本気でやったけれど負けて悔しいとか、日本代表になれなかったとか、そこの機微が楽しいんです。

なんとなく趣味でやるのもいいと思いますが、僕はそこにあまり楽しさを感じられないんです。「それほんとなの?」って確かめにいくのも、本気でやらないと楽しくないんですよね。本気で熱を入れてやってみることが好きなんです。もちろん、リノベるの経営にはとても熱くなります。熱を入れて楽しめるので、会社経営は大好きです。

–そうなんですね。今日は素敵なお話をありがとうございました。

ありがとうございました。

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