スタンフォード大学で学んだ、モノづくりの面白さとは

Akira Wang(あきら・わん)
生まれてから5歳までを日本、小学校から高校までをシンガポールで過ごす。その後、アメリカ・スタンフォード大学に入学し、エンジニアリングを学ぶ。現在はシリコンバレーでエンジニアとして働く。大学生のころ、本格的にモノづくりに目覚める。今までにたくさんのハードウェア・ソフトウェアを制作してきた。学生時代にはチームラボでのインターンも経験。

–Akiraさんがいままでに作ってきたものを紹介してください。

チームで作ったものでいうと、

教育用のロボットを作ったり

ウサギの毛の光沢をリアルに再現したCGを作ったり

スタンフォード内のロボコンみたいなやつに参加して自走ロボットを作ったりしました。

一人で作ったものでいうと、小さい鉄琴を作ったり

日光の時間帯ごとの色の変化に合わせて同じ色に変化していくIoTライトを作ったりしました。

他にも、大学入学以降いろいろなものを作ってきました。

–いつ頃からものづくりを始めましたか?

小さいころからやっていましたが、本格的にのめりこんだのは大学2年生の時です。2年生の時にスタンフォードで受けた、とある機械工学の授業があって。それがきっかけですね。

その授業は、動体力学を教える授業だったんですけど。その先生がめっちゃよかったんです。その先生は、授業に毎回デモを持ってきました。実際に作った、物理的に触れる簡単なデモを持ってきて、それを使って動体力学の理論を全部説明してたんです。それが衝撃的で。すげえなって思いました。もの作って見せるだけで話が分かるっていうのが面白かった。

「もの作って見せるだけで話が分かる」っていうのが、ものづくりの素晴らしいところなんです。例えば、何か自分の頭にアイデアが浮かんだとします。でも、それを言葉で人に説明するのってとても難しいですよね。まず、話に興味を持ってもらって、さらに最初から最後まで話を聞いてもらって。言葉で説明すると長くなってしまうし、正確に伝わらないことも多いです。でも、ものを作れば、見て触って、五感で感じてもらえる。一瞬で伝わります。スタンフォードの授業を受けて、そういうことに気づいて以降、モノづくりに真剣に取り組むようになりました。それ以前は、なんとなく楽しいから作っていたんですけど。その授業を受けてからは、モノづくりの目的とかイデオロギーとかマインドセットを持って、モノづくりをするようになりました。

–ものづくりのどういうところが面白いですか?

人を感動させられることです。伝えたい概念をきちんと実物に落とし込むことができれば、10分説明しても伝わらないようなことが、一瞬で伝わります。そして、それはときに感動を伴います。見てすぐ感動してもらえた時、僕はとてもうれしいです。見てすぐに「おー!」っていう反応をしてもらえた時、とても達成感を感じます。ものづくりで人を驚かせたいんですよ。

その人の頭の中にある既存の考え方をぶち壊すような、まったく新しい概念を一瞬で伝えられるようなものづくりがしたいんです。見る人にひらめきや驚きを与えて、その人の考え方を変えてしまうようなものが最高ですね。それはとても難しいことですが、出来た時の達成感はすごいです。僕はスタンフォードの授業を受けてそういう体験をしたので、同じような体験を他の人にも味わってもらいたいんですよ。だから僕はものづくりをしています。

–スタンフォードでは、エンジニアリングだけでなく、デザインも学んだのですよね?

そうなんです。エンジニアリングとデザインを両方学ぶプログラムだったので。これは本当に良かったです。エンジニアがデザイナーの考え方を学ぶのって、とても大事なことだと思います。

エンジニアとデザイナーの違いでよく言われているのは、エンジニアって機能を詰め込みたがります。機能を作るのがエンジニアの仕事なので、たくさん機能を作ることがエンジニアの存在意義なわけです。こんなすごい機能作りましたよっていうのがエンジニアのプライドです。それに対して、デザイナーのプライドって、機能を意味あるものにすることなんです。ユーザーが使わない機能を取り除いて、使える機能だけを残すのがデザイナーです。

それを知ってから、見える世界が変わりました。エンジニアの僕がデザイナーに、「こんな機能作ったよ!」って言っても、デザイナーは興味のない目で「フーン、で?」って感じになることが多く、彼らは「実際、ユーザーはそれをどう使えばいいの?」っていうことにしか興味がないんです。そういうデザイナーの気持ちが理解できるようになったのは本当に良かったです。

これに関して、スタンフォードのd.schoolではテレビのリモコンの話が有名です。テレビのリモコンって20~30個くらいボタンがついていますよね。チャンネルのテンキー、音量、入力切替とか。最近はボタンの数も増えている。

マーケットリサーチによると、リモコンって、お年寄りが一番つかっているんです。で、実際にお年寄りがどのボタンを使っているかを調べた調査があって。実際よく使われているボタンって、3つしかないんです。音量を上げるボタンと音量を下げるボタン、チャンネルを上方向に切り替えるボタンの3つです。リモコンの電源ボタンすら使わないそうです。テレビに付いてる電源ボタンを直接押しちゃう。チャンネルを下方向に切り替えるボタンも使わない。1チャンから2チャンに行くときは、全局を一周しちゃうんですよ(笑)

お年寄りにとっては、30個もボタンがあったらどれを押せばいいかわからないんです。「決定」とか「戻る」とか「メニュー」とか、たくさんボタンが付いているリモコンをおばあちゃんに渡しても使いこなせない。英語ではfeature creep(機能が多すぎること)というのですが、エンジニアだけでプロダクトを作ると、こういうふうにテレビのリモコンみたいなものができてしまうわけです。機能を省いて、ユーザーに寄り添ったものにするためにデザイナーがいます。これは、ぼくにとって大きな学びでした。

–他にスタンフォードで学んでよかったことはありますか?

ほかの学部の人と一緒にプロジェクトをやることが多いことですね。専門が違うと考え方が違うので。それぞれの学部の人が持っている先入観の違いに気づけたのは大きかったです。

教育現場で使ってもらうロボットを、教育学部の人とエンジニアリングの人で一緒に作るプロジェクトに参加したことがあって。教育学部の人とエンジニアリングの人で、ぜんぜん話が噛み合いませんでした。毎日毎日議論しても全然噛み合わなくて。たくさん議論をしたあとに、「お互い違う先入観をもっているからうまくいかないんだ!」っていうことにやっと気づいたんです。

教育学部の人たちが考えていたのは、どうやってロボットを通して教育者のメンタリティーを変えるかっていうことでした。それに対して僕たちエンジニアは、ロボットをどううまくつくるかということに興味があるんです。僕たちは、教師がいいか悪いかはコントロールできないものだと思っています。

エンジニアは、教育者がいいか悪いかは関係ないと思っていて、教育学部の人たちは教育者を良くしようとしている。だからもう前提が全く違ったんですよ。なので、どれだけ話し合っても噛み合わなかった。ほかの分野の人と一緒にプロジェクトをやることで、こういうことに気づけたのはとてもよかったです。

–新しく3Dプリンターを2台買ったそうですが、次に作りたいものはありますか?

まだ具体的なアイデアはないです。ただ、やはり人を感動させるためにものを作っていきたいです。学生時代にチームラボでインターンをしていたことがあるんですけれど、チームラボみたいな感じですね。エンジニアとしてアートがしてみたいです。

日本やアメリカって、生活インフラはもう十分整っているじゃないですか。なので、次は生活の質をいかに上げるかっていうことだと思います。人を感動させて、人を精神的に幸せにしていきたいです。

–今日は素敵なお話をありがとうございました

ありがとうございました。

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