教育ベンチャーが取り組んできた教育の課題

横山弘毅(よこやま・ひろき)。株式会社バンザンの常務取締役。横浜市戸塚出身。東海大学体育学部卒業。高校、大学ではやり投げの選手として活躍する。学生時代に出会った恩師の影響で教員を志すが、大学での教育実習で、社会経験がないまま教員になることに違和感を感じる。新卒で教育ベンチャーの株式会社バンザンに入社。オンライン家庭教師や、映像授業などの新規事業に関わる。現在は、株式会社バンザンの常務取締役として、1対1のオンライン教育を通して地方の学生にレベルの高い教育を届けるべく尽力している。

–横山さんは、元々、体育の教員になろうとしていたんですよね?

はい。学生時代に良い先生に巡り会えたおかげで、自分自身が助けられて、変わるきっかけになったりとかして、教員になろうかなというのは何となく思っていました。

しかし、教育実習生として教員の仕事を実際に体験した時に、「はたして自分は体育の先生になりかったのだろうか?」と素朴な疑問も湧いてきました。

公立の学校の場合、教員の第一の役割は、文部科学省が定めた教育指導要領をしっかりと遂行する人で、それを定年まで40年くらいやることになります。

実際には、関わる生徒は100人100通りでとても奥の深い仕事なのですが、大学を卒業するタイミングの自分には、決められたことを繰り返すように見えた教員の仕事は、単純に性に合わないように感じました。

もちろん、中からシステムを良い方向に変えていこうと奮闘している先生方の存在も知っていますが、同時にその難しさも感じます。

–なるほど。教員を志すのを辞めた後に今の会社に入った経緯を教えていただけますか?

就活では、スポーツ関係と教育関係に絞って面接を受けていました。そのなかで、株式会社バンザンは、教育ベンチャーという位置付けで、当時はかなりめずらしかったです。高校の部活で、そこまで強くない状態から下克上で強豪校の選手に勝っていくという経験があったせいか、ベンチャーという存在に魅力を感じ、入社しました。

–入社後は、どのような事業をやっていたのですか?

私が入社したときは、Amazonや楽天がちょうど存在感を出してきた時期で、ちょっと前にGoogleがYouTubeを買収してたりと、世界がインターネット化していく流れがありました。

バンザンは元々家庭教師をやっていた会社で、社内では「これからは遠隔教育だよね」という話が出ていました。それで、最初にオンライン家庭教師をやることになりました。

–うまくいきましたか?

当時は、まだiPhoneさえ発売されていないような時期です。今のように、高解像度の映像と音声で通信できる状況ではありませんでした。オンライン家庭教師を提供するための基盤をかなりのお金をかけて開発したものの、完成したものは決して使えるものではありませんでした。カメラの性能と通信技術が追いついていないので、生徒のノートを共有しようにも、文字やグラフが認識できないくらいボケてしまい、先生の方が認識できないような状況でした。

–なるほど。それで、教育のインターネット化は諦めたのですか?

いえ。実は、お隣の韓国ではデジタル教育がかなり進んでいました。2010年くらいには、韓国の学校は全て電子黒板になっていたり、生徒がタブレットを持っていたり、生徒の学習状況がクラウドで管理されていたりしていました。それを視察した時に、この流れは間違いなく日本にも来ると思ました。私たちがやっていることは間違っていないんだと。

–それは熱いですね!

次に取り組んだのが、映像授業でした。教えるのが上手い先生の授業を録画して、ストリーミング配信で流すというものです。これは、ある程度のユーザがつき、ある程度の成功は納めました。日本全国どこに住んでいても、質の高い授業を受けられるという点では、教育格差の是正に貢献できたと思います。

一方、授業の形式自体は従来の予備校や学校とあまり変わっていません。むしろ、予備校や学校とは違って先生にその場で質問することができなかったり、生徒ごとに教え方を変えていくこともできません。

自発的に学ぶ意欲がある生徒は、映像授業によって、どんどん学力が上がっていくのですが、そもそも学ぶことに興味が持てない生徒は映像授業に参加しようなんて思いません。

もっと多くの生徒に新しい教育を届けたいという思いから、海外や国内の色々な事例を見て回ったり、地方の高校と提携してオンライン教育を授業ないで実施する、ということにも挑戦したりもしています。

–色々な場所を回って感じることはありますか?

地方の学生に質の高い授業を届けたいと思っていても、そもそも”地方”が多様だという事は認識してなくちゃいけないなと感じます。オンライン教育を受ける生徒がどんな場所に住んでいて、周りにはどんな施設があって、というのを実際に見にいくことでわかることがあります。

東京から同じくらい離れている2つの場所でもアクセスのしやすさが全然違うということがわかったり、不便そうに見えて実は生活インフラがコンパクトにまとまっているから暮らしやすい地域であることに気付いたり、神奈川の田舎の方より北海道の札幌の方が生活するのに便利だとか。そういう感覚が積み重なることで、より多くの人に喜んでもらえるサービスができるんじゃないかと思います。

–横山さんは、今後どういうことをやっていきたいですか?

様々な地方を回っていると、人口減少の問題をひしひしと感じます。東京の人口はまだしばらくは増加し続けるでしょうが、地方の人口はすごい勢いで減少します。

そうなると、地方の学校は統廃合が進み、地元を離れて一人暮らしをしながら学校に通う人が増えたり、家から数時間かけて学校に通ったり、地方にいると学校教育が受けられないという事態が発生するかもしれません。教育をオンラインで行えるような環境を整えることで、そこの問題を解決していきたいです。

しかし、教育を全部オンラインで代替できるかというと、そうでもなくて、やはりリアルなコミュニティは必要です。地方に色々な人が集まる場をもうけて、そこにコミュニティが形成されるというのは、教育以外の地方創生という観点から見ても大事なことです。

今後は、教育に限らず、地方に場を作ることにも取り組んでいきたいです。

–横山さん、今日はありがとうございました!

こちらこそ、ありがとうございました。

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